計画があれば、有事に迷わない。
「何から手をつけるか」を災害の最中に考えるのは困難です。あらかじめ計画を作っておけば、発災直後から「次に何をするか」が明確になり、復旧のスピードが大きく変わります。
このページでは、まず取り組みやすい「事業継続力強化計画」から始め、より本格的な「BCP(事業継続計画)」へステップアップする流れで解説します。
Step 1:事業継続力強化計画(ジギョケイ)
2019年の中小企業強靱化法で創設された制度です。中小企業が自社の災害リスクを認識し、防災・減災の取り組みを簡易な様式で計画にまとめ、経済産業大臣の認定を受けるものです。
BCPとの違い
| 事業継続力強化計画 | BCP | |
|---|---|---|
| 目的 | 防災・減災の取り組みを計画する | 事業を継続・早期復旧するための計画 |
| 策定の難易度 | 比較的容易(A4数枚程度) | 本格的(数十ページ以上になることも) |
| 認定制度 | あり(経済産業大臣認定) | なし(自社の計画) |
| 策定にかかる期間 | 数日〜数週間 | 数週間〜数ヶ月 |
| 対象 | 中小企業・小規模事業者 | 企業規模を問わない |
認定を受けるメリット
- ものづくり補助金等の加点——各種補助金の審査で優遇される。
- 日本政策金融公庫の低利融資——設備投資に対する特別利率が適用される。
- 信用保証枠の追加——信用保証協会の別枠が利用可能になる。
- 防災・減災設備の税制優遇——特定の設備について特別償却(20%)が適用される。
- 企業の信頼性向上——認定ロゴマークを使用でき、取引先への信頼性をアピールできる。
計画に記載すること
- 事業概要——自社の事業内容と経営資源を整理する。
- リスクの認識——ハザードマップ等で自社が受ける自然災害リスクを確認する。
- 初動対応——人命の安全確保、安否確認、被害状況の把握の方法を決める。
- ヒト・モノ・カネ・情報への対策——各経営資源への事前の対策を記載する。
- 平時の推進体制——計画を誰が推進し、どう見直すかを決める。
申請の流れ
①計画を策定 → ②経済産業局に申請(電子申請可) → ③認定(通常45日以内) → ④認定後は毎年の実施状況報告。申請は無料。商工会議所・商工会や、よろず支援拠点で策定支援を受けられる。
策定に役立つ資料・ツール
- 中小企業庁「事業継続力強化計画」——制度の概要、申請様式、記載例がダウンロードできる
- ミラサポplus——中小企業向け補助金・支援策の検索サイト
Step 2:BCP(事業継続計画)へのステップアップ
事業継続力強化計画が「自社を守る」計画であるのに対し、BCPは「事業を止めない・早く再開する」ための、より具体的で実践的な計画です。
事業継続力強化計画で防災・減災の基盤を作ったら、BCPでさらに踏み込んだ計画を立てましょう。
BCPの基本的な考え方
BCPは、災害時にすべての業務を同時に復旧するのではなく、優先すべき業務(中核事業)から先に復旧するという考え方に基づいています。
中核事業とは
「これが止まると、会社の存続に関わる」という業務のこと。売上の大部分を占める製品の製造、主要な取引先への納品、法的に止められないサービスなどが該当する。
BCPで決めること
- 中核事業の特定
自社の事業のうち、最優先で復旧すべきものを決める。「売上への影響」「取引先・顧客への影響」「法的義務」の観点で判断する。
- 目標復旧時間(RTO)の設定
中核事業を「いつまでに復旧させるか」を決める。取引先との契約や、資金が持つ期間から逆算する。
- ボトルネックの洗い出し
中核事業の復旧を妨げる要因(特定の設備、人員、仕入先、ITシステム等)を特定する。
- 事前対策の計画
ボトルネックへの対策を立てる。代替手段の確保、在庫の積み増し、バックアップ体制の構築など。
- 発動基準と初動対応
BCPを「いつ・誰が発動するか」を明確にする。発動後の指揮命令系統、安否確認、被害確認の手順を定める。
- 復旧手順
中核事業を復旧させるための具体的な手順。代替拠点での業務開始、仕入先の切り替え、応急的な生産体制など。
策定のポイント
- 完璧を目指さない——最初から100点の計画は不要。まず簡易な形で作り、訓練と見直しで改善していく。
- 経営者が主導する——BCPは現場任せにせず、経営者が意思決定に関わることが重要。復旧の優先順位を決められるのは経営者だけ。
- 取引先との連携を考える——自社だけでなく、主要な仕入先・販売先のBCP状況も確認する。サプライチェーン全体の継続性が重要。
- 定期的に見直す——事業内容、取引先、設備が変わればBCPも変わる。年1回は見直し、訓練で実効性を検証する。
BCP策定に役立つ資料
- 中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」——入門から上級まで、段階的にBCPを策定できるツール
- 内閣府「事業継続ガイドライン」——BCPの考え方と実践の基本文書
- 東京商工会議所「BCP策定ガイド」——記入例付きの実践的なワークシート
支援を活用する
計画の策定は、一人で抱え込む必要はありません。無料で相談できる窓口があります。
- 商工会議所・商工会——地域の商工会議所で事業継続力強化計画の策定支援を受けられる。
- よろず支援拠点——各都道府県に設置された無料の経営相談所。BCP策定のアドバイスも対応。
- 中小企業基盤整備機構——BCP策定に関するセミナーや専門家派遣を実施。
- 自治体の支援制度——BCP策定費用の補助金を設けている自治体もある。「○○市 BCP 補助金」で検索。
次のステップ
- まずは自社のリスクを地域のハザードを知るで把握する。
- 計画ができたら訓練をするで実効性を検証する。
- 資金面の備えは資金・保険を備えるで確認する。
出典・参照先
本ページは制度・計画策定の概要を示すものです。認定要件や優遇措置の詳細は変更される場合があります。 申請にあたっては、中小企業庁の最新情報や管轄の経済産業局にご確認ください。